シーラという子

ふと、手にとってみた。

お世辞にも清潔とはいえぬ姿に敵意むきだしの目。シーラは6歳にして傷害事件を起こし、トリイの特殊教室に送られてきた。決してしゃべろうとせず泣きもしない。ときに怒り狂い金切り声をあげ大暴れする。だが実は、ずばぬけた知能の持ち主で、心身に深い傷を負っていた…。暴力、貧困、虐待に蝕まれた少女が堅く閉ざした心をおそるおそる開き、一人の献身的な教師と深い信頼の絆で結ばれてゆく姿を描いた感動のノンフィクション。

感じたことは、誰もがそれぞれ必死で生きていて、自分のことで精一杯だということの再確認。逸脱性も、程度の問題に過ぎない。

ところどころ星の王子さまの引用が出てきて、それ自体もいいとともに、言葉ではなく、記録に残すことが人の心にどういう意味があるのか、わかりやすく体現している。

シーラは「星の王子さま」の本にしがみついた。どんなときもこの本を手元から離さず、本の一部を諳んじることができた。本にははっきりと文字で書いてあるので、わたしの言葉よりもより確実なものに思えたのだろう。