たった一通の手紙が、人生を変える

夢を叶える像、ラブ理論など、現代的な自己啓発本を書いている水野敬也の本。

人は嘘に対して非常に敏感です。次のことを守ってください。「本音であること」。テクニックだけで文章を書くと、「本音を隠した文章を書く難しさ」があります。

夏目漱石の手紙があまりにも秀逸で、こんな物言いをできるようになりたいものだと思う。

ご希望に添えず申し訳ないけれども今貸してあげる金はない。僕の親類に不幸があって、そのため葬式その他の費用を少し援助してやった。だから今うちにはなにもない。僕の財布に金があればあげるのだが、財布も空だ。
君原稿料の支払いを出版社が伸ばすように、君も家賃の支払いを伸ばしなさい。家主がグズグズ文句をいったら、出版社から原稿料が取れた時に支払うより他に、致し方ありませんと言って、相手にしないでいなさい。
君が悪いんじゃないから構わないじゃないか。

そして、

財布を見たら1円あるから、これで酒でも飲んで気を大きくし、家賃を追っ払いなさい。

すごいと思うのは、著書でも触れられている、「本音で話している」、「別のベクトルで援助を申し出る」などはもちろんのこと、「君が悪いんじゃないから構わないじゃないか。」とか、「これで酒でも飲んで気を大きくし」とか、なんというか、物事に対する意味付けが気持ちいい。

手紙を書くというのは、どちらかと言えば自分との対話ができることが重要だとも思う。 漠然と存在している自分と他人という関係性が、手紙を書くにあたって整理され、より具体化される。それが重要なんだ。

夏目漱石は手紙を書きながら、この弟子と自分の関係を明確化し、自分の金銭状況を把握し、弟子と酒でも飲みに行った時の気持ちよさも得る。